奥羽本線 (山形)

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この記事は、最終更新日よりおよそ 4 年 8 ヶ月経過しています。 公式サイトなどで最新情報を確認してください。(最終更新:2019年9月)
📅 筆者の最終訪問時期:2019年夏
本稿は、2019年夏、またはそれ以前の情報です。
奥羽本線 (山形)へ訪問の際は、予め公式ホームページなどで最新の情報を確認してください。
車窓から見る置賜盆地

奥羽本線(おううほんせん)は、福島駅福島県福島市)から山形駅山形県山形市)・秋田駅秋田県秋田市)を通って青森駅青森県青森市)までを結ぶ鉄道路線。運営はJR東日本。一部複線・全線電化。

本稿では、このうち福島駅福島県福島市)から新庄駅山形県新庄市)までの区間を扱う。この区間は「山形新幹線」が走るとともに、普通列車には「山形線(やまがたせん)」の愛称が付けられている。

新庄~秋田~青森間については「奥羽本線」を参照。

かつては長距離列車や貨物列車も走っていたが、新幹線直通に際し標準軌に改軌されたため、他の在来線との直通運転ができなくなった。同じ奥羽本線でも、新庄より先(北)へは直通運転できず、全ての普通列車が福島~新庄間での折り返し運転になっている。

みどころ

松川の渓谷

福島駅を出た列車はしばらく福島市の市街地を走るが、庭坂を出ると山の中に入り、車窓が一変する。

奥羽本線 松川橋梁(赤岩駅付近)

とりわけ赤岩駅付近を流れる松川の渓谷は、奥羽本線・山形新幹線の車窓から眺めると美しく、新緑から紅葉、雪景色まで楽しめる。

この渓谷の景観美は「福島市景観100選」にも入っているが、赤岩駅の通年全列車通過により、立ち寄りが極めて困難になった。

ちなみに「福島市景観100選」で紹介されている奥松川橋は、庭坂駅から歩いて30分。または福島駅東口から福島交通バス「大笹生経由折戸」行きか「荒古屋」行きで終点下車、いずれも歩いて15分。ただし折戸行きのバスは1日3本、荒古屋行きは1日4本。庭坂まで行けば、列車のほかにバスも毎時1-2本運行されている。

板谷街道と万世大路

奥羽本線の全列車が通過する秘境駅として知られる赤岩駅だが、かつては松川を挟んで対岸に板谷街道(米沢街道)が通っており、李平宿があったようだ。江戸時代まではここが交通の要衝であったが、悪路の難所でもあったため、明治に入ると飯坂村から栗子山をトンネルで抜けて真っ直ぐ米沢に抜ける「萬世大路」の開削が進められた。

この新道が開通すると、板谷街道の県境区間は廃道となり、宿場としての役割を終えた李平も大正年間には廃村になったそうだ。庭坂 - 李平 - 板谷と結んでいた旧街道の県境区間は長らく歩く人もおらず、荒廃してしまっているようだ。

現在の国道13号(万世大路)から赤岩駅への入口にある杉ノ平集落までは、飯坂温泉駅から1日4便(朝1便、午後3便、日祝運休)バスが出ている。その終点「杉の平」から脇道へ入り、大平集落を通り抜けて8kmほどで赤岩駅に辿り着く。

赤岩駅は近隣集落の最寄り駅として存続したが、人口流出が続き、駅の利用者がいなくなって、2012年12月からは冬季全列車通過駅となった。さらに2017年春の改正からは通年全列車通過となった(つまり定期列車が停まったのは2016年11月まで)。

赤岩駅へは列車で訪ねることができなくなったので、最寄りはこの「杉の平」バス停になっている。このバスは沿線住民の通学や通院に特化したようなダイヤになっている(朝1便、夕方3便、日祝運休)が、このバスも杉ノ平集落までで折り返し、大平集落へは入らない。つまり、赤岩駅周辺はほぼ無人になっているということだろう。

せっかくの景観なので、駅付近だけでも整備して観光拠点になったら良いように思うが、それは地元(福島市)次第ということだろうか。

赤岩駅やその周辺の鉄道遺構については、時々廃墟趣味の人たちによる訪問記を見かけるが、あの状態では駅利用者を期待できないだろうし、趣味人が降りて不慮の事故でもあると困るだろうから、鉄道会社としては全列車通過措置もやむなしという感想を持ってしまう。


スノーシェッドに覆われている峠駅 かつては左側にスイッチバック式の側線があり、ホームはその先にあった

福島山形の県境は人家まばらな豪雪地帯で、今も昔も難所として知られる板谷峠区間に入る。赤岩駅こそ全列車通過になったが、その先も豪雪地帯のため駅全体がスノーシェッドに覆われている独特の雰囲気や、その名もずばりの峠駅など、鉄道ファンにはよく知られる秘境駅が続く。こうした雰囲気が好評なのか、ここ数年は外国人観光客の姿も多く見かけるようになった。

かつての駅はスノーシェッドの外のスイッチバック上にあったが、スイッチバック廃止後に本線上に移設されたため、このような格好になった。
峠駅のスイッチバック線路の名残

福島~米沢間の峠越え区間は、かつては長距離特急・急行・夜行列車や貨物列車も多く行き交っていた幹線ながら、赤岩板谷大沢の4駅連続スイッチバックが、この区間の難所ぶりを物語っていた。

しかし1990年3月の山形新幹線(ミニ新幹線)開業のために改軌され、山形新幹線以外の長距離列車や貨物列車はすべて廃止(他の区間へ迂回)された。性能の良い電車しか通らなくなったため、途中4駅のスイッチバックは廃止されて、長大編成が通ることもなくなったため、本線上に普通列車(2~4両編成)のみが停まる短いホームが設置された。

改軌後は、通過する列車(山形新幹線)は多いが、中間駅に停車する普通列車はごくわずかしかなく、中間駅の訪問者や18きっぱーにとっては今も難所のひとつになっている。

峠駅前に店を構える「峠の茶屋」 今も駅で立ち売りを続けている「峠の力餅」が有名だが、店舗では軽食メニューも提供している

峠駅では「峠の力餅」の立ち売りが今も続けられている。力餅を購入したい場合は、千円札を用意して米沢寄りの扉の前で待とう。停車時間はわずかだが、ダイヤが乱れていなければ、車掌さんも待ってくれるようだ。

名物「峠の力餅」は8個入1折で1,000円と良い値段だが、出来立ての良い材料を使っていて柔らかく美味。本物の餅なのですぐに固くなるから、美味しいうちに食べよう。土産にする場合は軽く油を敷いたフライパンで焼いてやるとまた違った風味を楽しめる。

2019年冬までは10個入りだったが、2019年夏の訪問時には8個入りになっていた。

人里離れた山奥にある峠駅だが、駅前には2軒の茶店がある。1軒は「峠の力餅」製造元の「峠の茶屋」。もう1軒は山菜料理メニューが豊富な「峠の茶屋江川」。似た屋号だが別の店。いずれも駅からすぐの場所にあるので、訪問の際はぜひ立ち寄りたい。

滑川温泉 福島屋旅館 峠駅からさらに4km山奥にある1軒宿

この山奥にある峠駅に通じるたった1本の市道を、さらに4kmほど山奥に入ると、滑川温泉の1軒宿、福島屋旅館に到着。途中の分岐には道標があり、舗装された1本道なので迷うことはないが、宿泊する場合は列車に合わせて旅館が送迎してくれる(要予約)。道中は真っ暗で携帯電話も圏外になり、熊も住んでいる山奥なので、夕方以降や天候が悪いときは歩かず、旅館の送迎を利用しよう。

滑川温泉 福島屋旅館 人里離れた山奥で電気も電話も来ていないため、自家発電で営業している

滑川温泉では1泊2食の旅館営業のほか、昔ながらの自炊湯治も行っており、湯治棟は格安で宿泊できる。携帯電話は長いこと圏外だったが、2019年夏になってKDDIの無線中継局が設置され、au の FD-LTE Band 18/26 のみ圏内になっていた(ドコモとソフトバンクは相変わらず使えない)。宿泊の場合は客室で Free Wi-Fi が使え(ただし遅い)、携帯機器の充電も普通にできる(消費電力の大きい冷蔵庫などは使えない)。

小さな旅モデルコース 図のうち滑川大滝は吊橋通行不可のため到達困難

滑川温泉から前川沿いにさらに1kmほど歩くと、日本の滝百選に選ばれた「滑川大滝」があるが、途中の吊り橋が老朽化して通行止めになっていることから、到達するには川の渡渉が避けられない。米沢市にはぜひ吊り橋を復旧してほしいところだ。

滑川温泉からさらに5kmほど山奥に入ると、姥湯温泉に到着。ここも宿泊ならば送迎を利用できる。この先は西吾妻山の登山道で、薬師森、久蔵森、明月湖、東大巓を抜けて天元台高原へ至る上級者向けの登山道となる(薬師森までは整備されている)。天元台高原からはリフトとロープウェイを乗り継いで白布温泉へ至る。

なお、冬季は板谷駅~峠駅間の市道は除雪されているようだが、滑川温泉・姥湯温泉へ向かう市道は除雪されず冬季通行困難(雪山登山)、各温泉宿および峠の茶屋は冬季休業となる(立ち売りの力餅は電話で予約すれば冬季も購入できる)。

峠駅~滑川温泉の写真

H{ ’J Ou line Itaya pass

置賜盆地

赤湯駅から見る米沢方面の山なみ
山形新幹線「つばさ」と山形鉄道フラワー長井線

米沢を出ると、しばらくは豊穣な盆地の中央付近を走り、沿線には農地が広がる。

置賜盆地は、概ね現在の米坂線に沿って旅したイザベラ・バードが『日本奥地紀行 (Unbeaten Tracks in Japan)』で「東洋のアルカディア」と評したことでも知られる。

赤湯で合流する山形鉄道フラワー長井線は文字通り沿線に花の名所が多いことから名付けられた。また、米沢で合流する米坂線の沿線には川西町にもダリア園やハーブガーデンなどがある

蔵王

最上川

銀山温泉

新庄

大蔵村・肘折温泉

鮭川村

温泉

駅一覧(各駅へのリンク)

  • 正確な情報は、最新の時刻表公式ホームページなどで確認してください。
  • リンクが赤色の駅は、本サイトでは現時点で該当記事がありません(準備中または執筆予定無し)。近隣のリンクが青色・紫色の駅の記事をご覧ください。
  • 奥羽本線 (山形)では、SuicaなどのICカードは利用できません。乗車前に切符を購入するか、現金での精算が必要になります。
駅名 駅間キロ 累計キロ 山形新幹線 接続路線・備考 出札 配線 所在地
福島駅
ふくしま
- 0.0 Pictogram Railway.pngJR東北新幹線東北本線
Pictogram Railway.png阿武隈急行
Pictogram Railway.png福島交通飯坂線
Pictogram Bus.png福島交通
福島県
福島市
笹木野駅
ささきの
3.8 3.8 Pictogram Bus.png福島交通「水口下」福島市役所行、庭坂荒町行
庭坂駅
にわさか
3.1 6.9 Pictogram Bus.png福島交通 福島市役所行、庭坂荒町行
赤岩駅
あかいわ
7.7 14.6 (全列車通過)  
板谷駅
いたや
6.6 21.2     山形県
米沢市
峠駅
とうげ
3.3 24.5    
大沢駅
おおさわ
4.3 28.8    
関根駅
せきね
6.0 34.8    
米沢駅
よねざわ
5.3 40.1 Pictogram Railway.pngJR米坂線
Pictogram Bus.png山交バス
Pictogram Railway.png米沢市民バス 市街地循環線、万世線
置賜駅
おいたま
5.5 45.6    
高畠駅
たかはた
4.3 49.9 Pictogram Bus.png山交バス 高畠町役場行、米沢駅前行 東置賜郡
高畠町
赤湯駅
あかゆ
6.2 56.1 Pictogram Railway.png山形鉄道フラワー長井線
Pictogram Bus.png南陽市市内循環バス
南陽市
北赤湯信号場
きたあかゆ
- 61.6 (乗降不可) -
中川駅
なかがわ
8.3 64.4    
羽前中山駅
うぜんなかやま
3.9 68.3     上山市
かみのやま温泉駅
かみのやまおんせん
6.7 75.0 Pictogram Bus.png上山市営バス 市内循環線
茂吉記念館前駅
もきちきねんかん
2.8 77.8    
蔵王駅
ざおう
4.0 81.8   山形市
山形駅
やまがた
5.3 87.1 Pictogram Railway.pngJR仙山線左沢線
Pictogram Bus.png山交バス
Pictogram Bus.png山形市ベニちゃんバス
北山形駅
きたやまがた
1.9 89.0 Pictogram Railway.pngJR左沢線
羽前千歳駅
うぜんちとせ
2.9 91.9 Pictogram Railway.pngJR仙山線
南出羽駅
みなみでわ
1.7 93.6  
漆山駅
うるしやま
1.3 94.9  
高擶駅
たかたま
2.1 97.0   天童市
天童南駅
てんどうみなみ
1.3 98.3  
天童駅
てんどう
2.1 100.4 Pictogram Bus.png山交バス「天童バスタ-ミナル」天童温泉行、さくらんぼ東根駅経由村山駅行ほか
Pictogram Bus.png天童市営バス 寒河江BT行
乱川駅
みだれがわ
3.0 103.4  
神町駅
じんまち
2.9 106.3   東根市
さくらんぼ東根駅
さくらんぼひがしね
1.8 108.1 Pictogram Bus.png山交バス 東根温泉経由村山駅行、天童駅行
Pictogram Bus.png東根市民バス
Pictogram Bus.png河北町営バス東根線
東根駅
ひがしね
2.5 110.6  
村山駅
むらやま
2.9 113.5 Pictogram Bus.png山交バス 東根温泉駅経由天童駅行、尾花沢行ほか
Pictogram Bus.png村山市営バス
村山市
袖崎駅
そでさき
8.0 121.5    
大石田駅
おおいしだ
5.4 126.9 Pictogram Bus.png山交バス 尾花沢行、東根温泉経由公立病院行
Pictogram Bus.pngはながさバス 銀山線 銀山温泉行(尾花沢市役所から市内各方面へのバスあり)
北村山郡
大石田町
北大石田駅
きたおおいしだ
3.9 130.8    
芦沢駅
あしさわ
2.9 133.7 Pictogram Bus.png尾花沢市営バス 毒沢線(平日のみ) 尾花沢市
舟形駅
ふながた
6.6 140.3 Pictogram Bus.png舟形町デマンド型乗合タクシー 最上郡
舟形町
新庄駅
しんじょう
8.3 148.6 Pictogram Railway.pngJR奥羽本線横手秋田方面)、陸羽東線陸羽西線
Pictogram Bus.png山交バス
Pictogram Bus.png新庄市営バス「かむてん号」まちなか循環線土内線、芦沢線
Pictogram Bus.png大蔵村営バス 肘折ゆけむりライン 肘折温泉
Pictogram Bus.png鮭川村営バス 鮭川村役場経由 羽根沢温泉行
新庄市
  • 山形駅から福島駅以遠(仙台エリア内)、仙山線・仙台方面(一部駅を除く)、陸羽東線 鳴子温泉・古川方面(一部駅を除く)に限りSuicaを利用できる。また、モバイルSuica特急券は山形新幹線の全停車駅にて対応。
  • 山形~羽前千歳間は仙山線・左沢線用の線路との単線並行区間。
  • 新庄~南新庄間は陸羽東線との単線並行区間。奥羽本線の列車は南新庄駅に停車しない。

【凡例】

  • 山形新幹線: ●=停車駅、○=一部停車駅、|=通過駅
  • 出札: み=みどりの窓口あり、○=出札窓口あり、△=自動券売機あり、無印=窓口・券売機なし(車内精算)
  • 配線:|=棒線駅(交換不可)、◇=交換可能駅、∨∧=単線と複線以上の境界駅、‖=複線以上の駅

参考

  • 信越本線 碓氷峠 - 同じくJR東日本の主要幹線上の難所のひとつとして知られる。こちらは北陸新幹線がフル規格で整備されたため、在来線の峠区間は廃止・バス転換された。片峠。